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中国で量産する時、日本人が気を付ける事

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目次

    はじめまして、トモ(@Japan_MFG_Tomo)です。

    普段は中国の工場で新開発案件~量産中の製品まで全ての工程で、日系クライアントの通訳&技術窓口をやっています。

    今回はTool-Net Japanさんとのコラボが実現し、記事を提供させていただくことになりました。

    普段運営しているブログはこちらです(ものづくり王国にっぽん

    ものづくりをしていると、原価低減や現地生産化の目的で、中国の工場に生産を委託する場面がたくさんありますよね。

    現地現物で製造工程を見ることができず不安を抱えたまま量産に移行されている担当者様も多いと思います。

    • 不具合が出ない工程になっているか
    • 工程は正しく管理されているか
    • 検査漏れで不良品が流出しないか

    などなど、製造を外部委託する時は工程監査を通して厳しくチェックをされているとは思いますが、今はコロナ禍。 直接見た方が良いのは分かっているが、現地法人やオンライン監査に置き換えていることも多いと思います。

    そんな方のために本記事では、「中国で量産する時に、日本人としてできる事」というテーマで書かせていただきます。何かの参考になれば幸いです。

    もし他にも気になる事がありましたら、お気軽にこちらまでDMください。

    個人の感想の範囲でお答えします。(Twitter@Japan_MFG_Tomo

    中国で量産する時に、日本人としてできる事

    中国での量産準備において、日本人としてできる事として個人的に大切にしている6つを記載します。

    1. 妥協ラインを事前に決めておく
    2. 全体像を共有し、突発対応を求めない
    3. 数値データを求める時は、後日実物を確認する
    4. 予定の半分の日程感で、進捗確認をする
    5. データの取り方に意図が入っていないか確認する
    6. ある程度のデータ違いは、見つけた事を伝えた上で黙認する

    少し深掘りします。

    妥協ラインを事前に決めておく

    中国人とやり取りをすると、相手の日本語レベルや自分の中国語レベルに関係なく、文化の違いにより納得いかない事がたくさん出てきます。

    • 日程通りに進まない
    • 要求に沿った内容の資料が出てこない
    • そもそも作業をやってもらえない

    日本人の当たり前は通じないので、どこまでなら許せるかっていうのを試されてると思ってください。 経験するうちに、一歩大人になれます。

    全体像を共有し、突発対応を求めない

    これはビジネスの基本的なスタンスといっても良いと思います。

    相手にとって突発対応になると、品質不良や納期遅れの言い訳を与える事になります。

    中国の方と仕事をしていると、「○○が理由でできません、遅れました。」 という言い訳が上手く、そのような場面に出会うことが多々あるかと思います。そのため言い訳の原因を予想し潰しておく事が、日程通りに進めるために重要です。

    全体像を提供した後は、各フェーズごとに「作業内容」と「作業の仕方」と「期限」を毎回伝えます。

    但し平気で期限遅れするので、期限には余裕を持つのが大切。

    そして、納品されたら後回しにせずに、即レスするのが礼儀です。

    作業内容は完全に任せると酷いことになるので、きちんと丁寧に説明した上で、工夫の余地を与えるのがおすすめです。

    数値データを求める時は、後日実物を確認する

    これは中国だけに限らないですが、データは基本的に自分たちに都合が良い物ばかり出てきます。

    したがって、データの正しさの裏付けのために、後日データの元となる実物を確認する事で、その整合性を確認することが大切です。

    ただし、事前に「実物は保管しておくこと」と伝えるのがマスト。 でないと試作品を廃棄される、他の商品と梱包するなどにより、実物が見つからなくなってしまいます。

    予定の半分の日程感で、進捗確認をする

    会社にもよりますが、残業は基本してくれないものだと思った方が良いです。

    したがって日本人なら1週間で終わるものは中国では2週間かかるものと想定して、予定の半分の日程感で進捗確認するのがおすすめです。

    一つコツを挙げるとすると、 「納期は〇月○日ですが、現状進めるうえで困っていることはありませんか?やり方で悩んでいることがあったら連絡くださいね。」 っていうと、何事もなかったかのように納期通りに物が届くことが多いです。

    データの取り方に意図が入っていないか確認する

    検査工程はヒューマンエラーがつきものなので、良品率を上げるには"正しい"工程管理が重要。

    そのためには正しくデータが取られる事をの確認が必要です。

    工場を見に行くと、ちょこちょこあるのが工程管理の手法を少し誤解しているケース。 たとえば工程内検査ではCpkが出ているのになぜか全数検査項目になっていて、さらに全検不良率が高いものは工程内検査でのサンプリングの仕方に問題がある事が多いです。

    この状態を放置したまま定期的にSPCデータを求めても、何ら意味のないデータが手に入るだけなので、ここの指導は非常に重要です。もしくは正確性を諦めた上で、他の方法を考える必要があります。

    ある程度のデータ違いは、見つけた事を伝えた上で黙認する

    どこまで許せるデータ違いかにもよりますが、以前あった問題が手を加えず自然に改善された場合は気を付けた方が良いです。

    4M1E 関係の変化点が無ければ、大きな変化はそうそう起きないはず。 何かのきっかけでデータが間違って入力されて、解決したように見えている可能性もあります。

    すると結果的に工程の作りこみができているように見えてしまうので、改善活動を実施するうえで弊害になる事があります。

    とお茶を濁してシチュエーションを紹介していますが、まあわかりますよね。

    なので、この場合は「わかっているけど、今は黙っておいてあげるよ」という態度を明確に伝えておくことが大切です。

    中国で量産する前に気を付けておくこと

    中国で量産を決定したら、サプライヤーに対して気を付けることがあります。

    事細かに見つけて都度指摘すると嫌われるので、知っておいた上で対策を考えておくのが正しいスタンスだと思います。

    気を付けておくべきことは以下の4

    1. 量産時に工程が完成しているとは限らない
    2. 実物が同梱されたデータ以外が正しいとは限らない
    3. 生産リードタイムが事前情報通りとは限らない
    4. 工程監査で見たものが現実とは限らない

    少し深掘りします。

    量産時に工程が完成しているとは限らない

    これは中国でも日本でも似ているところはあると思いますが、量産開始時に細かい事が詰め切れていない事は多いです。

    結局なし崩しで量産に移るわけですが、この時は8割方決まっているけど、もう少し改善の余地あり」くらいの状況が多くの場合で最高レベルです。

    したがってメーカー側も最初の3ヶ月程度を「初期流動管理」と設定し、不具合があればすぐに対応できるような発注体制をとることがあります。

    100点満点の工程を作ったつもりでも、開発時の見落としによる不具合が出てくるので、こんなもんです。

    実物が同梱されたデータ以外が正しいとは限らない

    基本的にお客様はこちらの標準納期を無視して物を要求してきます。

    1週間かかるよ」と言っても「あしたまで」とか平気で脅してくるので、最終的に3日くらいで落ち着くことが多いです。

    そうなると本来データ収集に必要な、一歩一歩確実に作業するための時間や、収集されたデータを確認するための時間が取れないので、提出データの品質が下がります。

    理由は工程飛びが起きやすかったり、測定基準決めが曖昧になったりなど、作業の確実性が犠牲にされるから。

    もっとひどいと、測定し忘れちゃったけどデータが取れてるなんて事もあります。

    したがって正しいデータが欲しいなら実物も提出してもらって緊張感を与える事が大切だし、自分たちも抜き取りなどで再検査するくらいの確認作業は必要です。

    後はコストや必要性との相談ですね。

    生産リードタイムが事前情報通りとは限らない

    サプライヤーはお客様の提示する納期を守るために、最初は余裕を持ったリードタイムを提示します。

    しかし本来図面に無かった仕様がどんどん追加され、最終的には余裕のないリードタイムになる事が多いです。

    しかし報告するリードタイムが変わると「なぜなぜ」攻撃が始まり時間コストが上がるので、基本は大勢に影響しない範囲で黙っておきます。

    したがって突発で発注が来ると対応できない事が多くなるんですが、理由は本来なかった仕様の追加によるものなので、メーカー側もあまり強気では責められません。

    工程監査で見たものが現実とは限らない

    工程監査は抜き打ちでは行われません。

    事前に何月何日、何時から何時まで、誰が行くのかという情報が提示されることが多いです。

    したがってそのメンバーや日時に合わせて、見せ物用の現場を作ることも可能です。

    中国では見た目を気にする工場が多い気がしていて、今まで工程監査などで訪れた工場はどこも非の打ちどころがないほど完璧でした。

    しかし後日に工程監査で見たものとは違う現実があると知りました。 不良品が発生、流出するはずがないのに流出した時に、「ああ、なるほど」と気づきました。

    オンライン監査をしている会社は特に、正確性が犠牲にされていることを理解していた方が良いです。

    中国現地でのものづくりの概念

    私が中国で働いていて感じた、ものすごくおおざっぱな特徴を紹介します。

    主観ですので当然「うちの地域では○○、うちの会社では○○、全ての中国がそうじゃない」という感想はあると思いますが、あくまで一つの見方という参考にしてください。

    私が感じた中国現地でのものづくりの概念は以下の3

    1. 問題は、起きるまでは問題なし
    2. 品質よりも面子が大切
    3. 上に政策あり、下に対策あり

    少し深掘りします。

    問題は、起きるまでは問題なし

    日本品質が称賛されるのは、圧倒的な丈夫さ、品質不良の少なさだと思います。

    それは「起こる可能性のある問題を未然に徹底的につぶす」ひたむきな姿勢から身に付いたものです。

    しかし海外では「コストは安い方が、売り上げは高い方が良い」のが普通です。

    したがって、問題が起きなければ、事前の作り込みは少なければ少ないほどコストが下がり、設計は褒められます。すると当然流出リスクが生まれます。

    過去に日本が災害対策の予算を削った後に大災害が頻発したのと状況が似ていますね。これも華裔の議員が提案した事だったと記憶しています。まあ文化の違いですね。

    ちなみに中国生産でも事前の作り込みは可能ですが、そうすると当然コストが国内生産とほぼ変わらなくなるので旨味が減ります。

    おそらく日本側も承知していて、「中国生産だから」という言い訳を残しているだけだと思います。

    今後なあなあにしていた部分でリコールがどんどん増えると思いますが、その時にどう現実と向き合うかでジャパニーズブランドの今後が変わります。

    コロナショックで行き来が止まった2020年から生産開始した物などは、2025年~20300年くらいで一旦何かリコールがあるんじゃないですかね。

    品質よりも面子が大切

    品質に対して、個人的な感覚だと、「どこら辺まで許容範囲か」という運用方法は、中国人の方が柔軟性を持っている気がします。

    例えば実際の運用において、「図面寸法を数ミクロン超えててアウトだけど、後工程に影響ないのでOK」っていう判断は担当者の好き嫌いが影響します。

    嫌いな人には細かくクレームを出して大問題にしますが、仲の良い人に対しては「こう対処しといたからね」と恩を売る事がよくあります。

    したがって日本と中国を比べたときに、技術者同士の交流は中国の方が多いように感じています。仲がいい方がお互いに仕事がスムーズに進むので。

    上に政策あり、下に対策あり

    日系メーカーのサプライヤー管理では、「信用できないから管理をきつくしよう」と何でもかんでも資料提出を求める傾向があります。

    再発防止で何でもかんでもチェックシートを導入するのもその一例です。

    しかし欧米メーカーは何かリスクを見つけてもとりあえず黙っておいて、大量に注文してから一気に大規模クレームをかけてくることがあります。

    私が勤めていた会社でも食らったことがあり、社内は一時非常に緊迫した空気になっていました。

    どっちもどっちですが、私は後者の方が緊張感があって良いなと思います。

    というのも、中国には上有政策,下有對策(上に政策あり、下に対策あり)という言葉があるからです。

    上の決める政策は、「こまめにデータを要求して、サプライヤーの工程と品質が安定しているかを都度確認する事」ですが、下が執行する対策は「資料にOKと書いてあれば問題なし」になります。

    すると現場では自然に「資料にOKと書いてあるからヨシ」という判断になります。

    結果、証拠として「資料を出した、お互い納得した」という記録が残るだけで、サプライヤー管理としては何にも機能してないのが現状です。

    中国で量産するなら、覚悟しておくべきこと

    最後にまとめです。

    私たち日本人が「品質よく、価格安く」を求めるのは自由ですが、世界は日本中心に回っていないので、世界で日本品質を実現するのは相当に困難です。

    • データは正しくない
    • 実際の運用はそうじゃない
    • 日程は守らない
    • 意図とは違う結論しか手に入らない
    • クレームが無ければ全部良品

    これらは覚悟したうえで海外サプライヤーと仕事をするべきです。

    したがって我々ができることは、

    • 不良品が出ない工程を予算の範囲内で作り上げる
    • 無理を見つけたら値上げを提案してあげる
    • どこまで妥協できるのか、ラインを決める

    こんなあたりだと思います。

    日本と違って育てながら稼ぐ体質を作る概念が存在しないので、知識や経験は、彼らにとってのモチベーションにはなりません。

    ただ一つ、お金だけが人に言う事を聞かせる方法になります。

    メーカー側も潤沢なお金をサプライヤーに払ってあげられるようにきちんと稼がないと、競争力がどんどん減ります。

    実際中国の現地生産もよその国のメーカーとサプライヤー獲得の競争で、ときに経験のないサプライヤーがようやく日系の仕事に従事してくれる状況もあります。

    ちなみに日本メーカーのイメージは、「安い、ロットが少ない、文句が多い」なので、極力関わりたくないのが海外サプライヤーの本音です。

    我々が日本のものづくりを守っていくにはどうしたらいいでしょうか。

    機会があれば一度みんなで語ってみたいですね。

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